日本旅行医学会
飛行機

旅行医学会趣意

毎年1500~1900万人の日本人が海外への旅行に出かけている

(法務省「出入国管理統計」)。

その中で旅行中に脳血管障害や心筋梗塞で入院治療を受ける患者数は

年間700人以上にのぼると推定されている。

さらに、この数字は旅行会社の経験を聞き取り集計したものであって、

その実態は全く判っていない状況でこれよりも軽症の疾患を加えれば

相当数にのぼることが容易に想像される。

これらの疾患は、適切な初期治療を行えば救命し得る可能性が高い。

また、日本人の主な出国先である中国、韓国、アメリカ合衆国などの国々では、

初期治療に必要な医療技術、医療設備が十分に整っているにもかかわらず、

言葉の問題や地域の医療情報が不確実であることから、

要治療者が適切な高度先進医療の恩恵を享受できない場合も多いと聞き及ぶ。

つまり、旅行者でもある患者さんたちが

訪問国で適切に治療が受けられる体制が早急に望まれるものである。

旅行者の疾患は突然襲ってくるものであり、救急医学的な考えに基づく対応法が必要となってくる。

さらに、近年は障害を持つ人々、高齢者が積極的に海外へ出かける傾向にあり、

その積極性は喜ばしいものであるが、

実際に医療サポートを受けながらの海外旅行を敢行しようとすると

支障が生じることが少なくなく、その為に旅行を取りやめるケースも多く見られる。

一方で外国からの日本訪問者が、日本国内での医療サポートを求める例も増加しているが、

日本国内での対応は十分ではない。

旅行者の医療サポートの実用を調査し、

具体的な提言と実際の旅行者へのサポートを行うことは急務である。

その上、日本人の旅行先が世界中の国・地域に広まっているにもかかわらず、

訪問地の衛生状態、医療状況に関する適切な情報を得られないことが多い。

その為、欧米人に比べてワクチン接種に関する意識が低く、

健康を守るために必要なワクチン接種を受けずに海外に出かける旅行者も多く、

感染の危険度は高まっている。

また交通の高速化により国内に発症前に持ち込まれる危険度も増してきている。

海外渡航者におけるワクチン接種に関する啓蒙や

帰国後の感染症管理に関する検討も今重要な課題となってきている。

これらの問題は医師のみの活動で解決出来るものではなく、

旅行に関わる様々な職種・業者を含めた検討と対応が必要となってくる。

旅行の医学に関する集会は散見されるが、救急医学的立場にたち、

旅行者の健康サポートを主眼とした組織は現在我々の知る中にはない。

そこで、研究・教育・サービスの提供を国内で行い、

旅行者の健康と安全を考える「日本旅行医学会」を設立することを企画するに至った。

「日本旅行医学会」は、上記の趣旨に添った旅行医学に興味を持つ各科の医師、

看護師、公衆衛生の専門家を中心として、旅行に関する研究機関、

関連事業者を取り込んだ会とする計画である。

その活動としては、上記の趣旨に添った内容における旅行医学に関する情報の収集、

研究、教育、情報提供を行うことにあり、さらに高地における医学、

旅行の妊婦に与える影響、感染症、熱帯医学などの分野に関する情報の収集、

研究、教育、情報提供も包含していきたい。

その為には、世界の医療機関や学会との情報交換、提携も視野に入れている。

「日本旅行医学会」は単に医学的な議論の場に終わらずに、

実際に旅行者にとって有益な方法論、手段、

対策の提示を行い旅行するすべての人々に有益な情報を

常に発信し続ける会としていくことを理念としている。

以上


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