日本旅行医学会

-旅行医学豆知識- 第1回 小児の旅行医学

家族での旅行は楽しいものですが、お子さんを連れての旅行には特有のリスクも存在します。せっかくの旅行を楽しい物とするために、子どもを連れた旅行で気をつけるべき点を紹介いたします。

事前知識

ほとんどの航空会社では小児への年齢制限はなく、生後8日の新生児から搭乗が許可されています。もちろん許可されているというだけなので4ヶ月未満の首がすわっていない状態では親の不安も大きく、あまり無理はしないほうがよいでしょう。また、国際線では2歳から、国内線では3歳以上の子どもには席を確保することを必要としています。
機内の食事は12歳まではチャイルドミールが用意でき、離乳食、アレルギー対応食等を提供できる航空会社もあります。ただし、小児食は24時間、アレルギー対応食は96時間以上前に予約する必要があるため、なるべく早い段階で航空会社へ連絡し、予約を入れるほうが確実です。
目的地は衛生環境がよく、安全が確保された地域であれば子ども連れでも安心、安全に旅行することが可能です。具体的には韓国、台湾、香港、シンガポール、西ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国、カナダ、ハワイ、グアム、オーストラリア等で、時差の少ない地域から始めるのがよいでしょう。

機内での注意

飛行機内の気圧は0.8気圧と低いため、離着陸時には気圧の減少が起こります。この際に小児は耳が痛くなり、不機嫌になったり泣き出すことがあります。自分ではどうすることもできないため、保護者が察し、対処してあげる必要があります。耳に小指を入れ、圧迫して密封し、ポンと離すポンピング(耳ポンプ法、pumping method)をしてあげると鼓膜内外の気圧差が緩和されるため、痛みがなくなります。他にも離着陸時にあめをなめさせたり、おしゃぶりをくわえさせたり、水を飲ませたりすることによって予防することができます。

万が一の為に

日本では医師は医師法の中で応招義務があり、診療を断ることが出来ません。しかし、海外では日本と異なり医師を受診する際に、担当医に患児の既往症、喘息などの持病、食物や薬品のアレルギー、現在服用中の医薬品、手術の既往などを正確に伝えないと診察を拒否される可能性があります。不測の事態によって現地で医者にかからなければならなくなったときでも子どもの情報を現地の医師にスムーズに伝えるために「小児用安全カルテ」を持参することをおすすめします。 この小児用安全カルテでは英語のできない方でも日英対照の記載事項を記入することで医師に英語で医療事情を伝達することができます。
適切な準備をすることで安心、安全な家族旅行を楽しんでください。

→さらに詳しい情報はこちら(PDF形式)


MENU