ジェット旅客機内の環境は地上と同じだと思いがちです。しかし、地上約10 Kmを飛ぶジェット旅客機の内部は想像以上に過酷な環境です。
機内の気圧は0.8気圧しかありません。これは富士山の5合目、つまり海抜2500mに相当する気圧です。気圧の低さに比例して酸素量も地上より20%も少なくなります。つまり血液中の酸素も減るということで、健康な人であっても血液中の酸素の割合は5%も減少します。若くて健康な人には何の影響もなくても、高齢者や心臓や肺の病気をかかえている人、貧血のある人にとって酸素不足は大きな負担となります。ときには機内で酸素吸入を行う事態にもなりかねません。
湿度も地上とは大きく違います。機内の湿度はたいへん低く、5-15 %しかありません。これは地上10 Kmの湿度0 %に近い乾燥した薄い空気を圧縮して機内に取り込んでいるからです。機内の温度は低めに設定されているため、なかなか体感しにくいですが、実は機内の空気はサハラ砂漠よりも乾燥していることになります。
次回はこのような過酷な環境で起こるロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)について紹介します。