ジェット旅客機内の過酷な環境の中に長時間おかれることで発症する、ロングフライト血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)について解説します。
乾燥した機内で皮膚が乾燥したり、コンタクトレンズがごろごろしたりする程度の不快感で済めばいいですが、問題は目に見えない汗による脱水です。機内で肺と皮膚から失われる水分は1時間に80 ccで、5時間のフライトでは400 cc、10時間では800 ccの水分不足を起こし、体内の血液が濃くなります。
さらに狭い座席に長時間座り続けると血流が停滞し、ふくらはぎの深部静脈に血栓が出来易くなります。血栓が静脈と心臓をへて肺に移動し、そこで詰まると肺塞栓となり、胸痛や呼吸困難が起こり、中には死亡するケースもあります。これがロングフライト血栓症ですが、エコノミークラスに限らず、水分不足と運動不足という条件が整えば、ファーストクラスでもビジネスクラスでも発症します。
特にご高齢の方、肥満気味の方、産後1ヶ月以内の方、大きな手術を受けて2,3ヶ月の方は注意が必要となります。
多くの場合到着間際の機内や、到着した空港で発症します。しかし旅行から1-2週間後に、帰宅した自宅で起こることもあるので、ロングフライト後2週間以内の心筋梗塞、心不全には要注意です。
日本旅行医学会では次の7つの予防策を提唱しています。
・ 2-3時間ごとに歩く
・ 座席に座ったままでかかとやつま先の上下運動と腹式呼吸を一時間毎に3-5分行う
・ 水分をまめに摂取する(アルコールは脱水を助長するので避ける)
・ ゆったりした服装
・ 足は組まない
・ 睡眠薬は使用しない
・ 座席は通路側に座る
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