日本旅行医学会

狂犬病

狂犬病

Charles E. Rupprecht, David R. Shlim

病原体

狂犬病は、急性進行性の致死的脳脊髄炎で、ラブドウイルス属の神経向性ウイルス、リッサ・ウイルス (Lyssavirus)属に感染して発症します。このウイルスはさまざまなタイプのものが世界中にありますが、どのタイプのリッサ・ウイルスでも狂犬病を発症し、年間の発症数は数千万件で、死亡数は数万件にのぼります。

感染経路

狂犬病に罹患した哺乳類の唾液中にウイルスが含まれています。ほとんどの場合、伝播は動物の咬傷から発生し、ウイルスが咬傷(咬創)に侵入して発病します。咬傷から侵入したウイルスは血流中には入らず、神経シナプスに沿って脳に達し、脳炎を発症します。ウイルスは神経系にかなり速いスピードで侵入することもあれば、神経系に侵入する前に咬傷の部位に長く留まっていることもあります。咬傷部位の神経終末が近接していると、脳炎をさらに速く発症させるリスクが上昇します。手と顔面では神経終末がかなり密集しているので、咬傷からウイルスが侵入するリスクが高いとされています。稀には、動物に咬まれなくても解放創や粘膜にウイルスが侵入する別の経路で伝播することもあります。

哺乳類の全てが狂犬病に感染すると考えられており、特に肉食動物やコウモリ類が主な宿主です。開発途上国ではイヌが主な宿主ですが、狂犬病の疫学は地域や国ごとに異なり、その多様性は全種類の哺乳類の咬傷を網羅し、医学的に評価しなければならないほど哺乳類全てで異なっています。コウモリの咬傷はどの地域でも問題となり、予防法の適応となっています。

発生地域

狂犬病は南極以外の大陸全てで発生します。地域別に異なったタイプのウイルスが哺乳類の宿主に適応していて、イヌとコウモリやキツネ、ジャッカル、マングース、タヌキ、スカンクなどの肉食動物の野生動物で保有されています。アフリカの一部、アジア、中央アメリカ、南アメリカなどはイヌの狂犬病が風土病である地域ですが、これ以外の地域でも発生します。表3-13は最近狂犬病が発生しなかった国のリストで、その国での発生情報が入手できます(以前は「狂犬病のない」国とされていた)。

世界中の狂犬病の状況についての情報は次に挙げるリストから入手できます。

  • 世界保健機構World Health Organization (www.who.int/rabies/rabnet/en/ )
  • ヨーロッパにおける狂犬病発生公報Rabies Bulletin—Europe (www.rbe.fli.bund.de )
  • 世界動物保健機構World Organization for Animal Health (www.oie.int/eng/en_index.htm )
  • 米国内の地域保健局、大使館、または地域の領事館

上記のリストは手引きとはなりますが、それ以上の最新情報は入手できません。発生状況の調査の基準は地域によって異なり、レポート状況も狂犬病の再発生や新たな発生に伴って突然変更されることがあります。旅行者が.狂犬病に罹患する可能性のある事実上の罹患率は正確な割合で算出されてはいません。しかし、調査によるとおおよそ10万人の旅行者に対して16~20人の割合となっています。

3-13 2009年度に定住者に狂犬病が発生しなかった国とその他の自治区1

地域 国名
アフリカ  カーポ・ベルデ、リビア、モーリシャス、レユニオン、サントメ=プリンチペ、セイシェル
アメリカ 北アメリカ:バミューダ、サンピエール島、ミケロン島
カリブ諸国:アンティグア・バーブーダ、アルバ、バハマバルバドス、ケイマン諸島、 ドミニカ共和国、グアドループ、ジャマイカ、マルティニーク、モンセラト、オランダ領アンティル、セントクリストファー・ネイビスセントルシア、 セント・マーティン、 セントビンセント・グレナディーン、タークス・カイコス諸島、英領および米領バージン諸島
アジア・中東 ホンコン、日本、クエート、レバノン、マレーシア(サバ州)、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦
ヨーロッパ オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ共和国2、デンマーク2、フィンランド、ジブルタル、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、マン島、ルクセンブルグ、オランダ2、ノルウェイ、ポルトガル、スペイン2 (北アフリカのセウタおよびメリラを除く)、スエーデン、スイス、イギリス2 
アセアニア3 オーストラリア連邦2、クック諸島、フィジー共和国、仏領ポリネシア、グアム、ハワイ州、キリバス共和国、ミクロネシア共和国、ニューカレドニア、ニュージーランド、北マリアナ諸島、パラオ共和国、パプアニュギニア、サモア独立国、バヌアツ共和国

1コウモリが狂犬病に罹患しているが、その他の哺乳類には狂犬病が発生していないと報告されている地域
2コウモリのリッサ・ウイルスが存在するが、その他の哺乳類には狂犬病が発生していないと報告されている地域
3太平洋側のオセアニア諸国のほとんどでは狂犬病が発生していないと報告されている

臨床症状

狂犬病に罹患している動物に咬まれたことが確認されている場合やその可能性が高い場合、または咬まれた可能性があると思われる場合に受診します。臨床症状は急性進行性脳炎の症状と一致します。感染後の潜伏期間はさまざまですが、およそ1~3ヵ月間です。症状は急性に経過し、発熱や軽微な症状を伴う非特異的な様相の前駆期から、神経症状期へと移行しますが、神経症状期の特徴は不安、不全麻痺、神経麻痺で、その他の脳炎の兆候も現れ、嚥下筋の痙縮が水を視覚、聴覚で察知したり、水を認知すると刺激され(恐水症)、譫妄、痙攣も起こり、急速に昏睡に陥り、死に至ります。

臨床症状が発現したら、ほとんどは7~14日で死亡します。

診断

狂犬病に罹患している動物に最近咬まれ、脳炎様の症状がある患者では、容易に診断が付きます。しかし、狂犬病に罹患している動物による咬傷が確認されていても、ウイルスの初回感染から潜伏期間が数週間~数ヵ月に亘っている場合は症状が多様で、脳炎を発症する他の病原体との鑑別診断が難しく、臨床診断は容易ではありません。

確定診断は、神経組織中や角膜圧痕にあるいは項部生検で、ウイルス抗原やアンプリコンの検出法によりウイルスが確認されることです。診断法に関してさらに詳細な情報はアメリカ疾病管理予防センター(CDC;www.cdc.gov/rabies)に掲載されています。脳炎の症状がある患者では、ウイルスが示す特異的血清学的反応も診断に役立ちます。

治療法

狂犬病の臨床兆候が現れた後は有効な治療法はありませんが、広範囲な医療処置を施して回復した症例が非常に稀にはあるので、将来は実験的な療法が開発されるでしょう。

旅行者の予防法

動物からの咬傷を避ける

狂犬病が風土病である地域を訪れる旅行者は、狂犬病に罹患するリスクがあることを知り、動物咬傷の予防法について教育を受ける必要があります。旅行者は野良犬・猫や飼われていない動物との接触を避け、野良犬を不注意に驚かせないように気を配り、コウモリや野生動物には接触しないようにし、サルなどのヒト以外の霊長類が近くに居る場合は食物を食べたり、携行したりしないように注意します。 コウモリの洞窟に入って空気を吸い込むことは問題ではありませんが、「コウモリや野生動物に触わってはいけない」との教育を受ける必要があります。コウモリの洞窟に入らなくても、エコツーリズムなどでコウモリに出会うこともあります。コウモリの歯は小さいので、肉食動物に比べて咬傷は目立ちません。コウモリが咬んだり、引っ掻いたりしたことが確認されたり、その疑いがある場合は暴露後予防接種を受ける根拠となります。

子供は体が小さいので咬傷が広範囲になりやすく、また、動物への興味が大きく、咬まれたり触れたりしても報告しないことがあるので、狂犬病に罹患するリスクが高くなっています。咬まれたばかりの傷口や粘膜を舐めると理論的には狂犬病に罹患するリスクとなり、暴露後予防法が考慮されますが、旅行者でそのようなケースが報告されたことはありません。

ワクチンの事前接種

旅行する国の狂犬病の罹患率、適切な抗狂犬病生物製剤の入手度、活動範囲、滞在期間に基づき、ハイリスクの旅行者にはワクチンの事前接種が勧奨されます。事前接種を受けるべきかを決定するには、リスクのある地域を繰り返して訪問する可能性や、リスクの高い地域に定住する可能性によっても限定されます。獣医、動物取り扱い者、野外生物学者、洞窟探検家、宗教伝道者、狂犬病の検査室や研究室の従事者は事前接種を受けることが勧奨されています。表3-14に事前接種の基準を示してあります。狂犬病ウイルスを中和する抗原による血清学的検査をワクチンの再接種を考慮する判断基準のひとつとして用いています。狂犬病の血清学的検査を行っている米国内検査室はCDCのウエブサイト(www.cdc.gov/rabies)で検索できます。(第2章 旅行医療保険と退避保険Chapter 2, Travel Health Insurance and Evacuation Insuranceを参照)。

米国では事前接種はヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン(HDCV)または精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCEC)の3回接種法となっています。このワクチン接種法のスケジュールが表3-15に掲載してあります。旅行者は旅行前に予防接種を3回必ず受けてください。旅行者が狂犬病ワクチンの3回接種を旅行前に完了できない場合は、中途になった事前のワクチン接種が暴露後のワクチン接種に支障を来すので、ワクチン接種を開始すべきではありません。事前接種を受けたからと言って、暴露後の医療処置が必要ないわけではありませんが、事前接種を受けると暴露後の予防法が簡潔になります。事前接種を受けると、狂犬病ウイルスに知らず知らずのうちに感染した場合や暴露後予防処置が遅延した場合に、ある程度の予防とはなります。

3回の事前接種を完了した人、暴露後予防処置を完了した人は免疫を獲得した人とみなされ、狂犬病の動物に咬まれない限り、追加接種を必要としません。定期的な狂犬病ウイルス中和抗原による血清学的検査は、一定した経路の海外旅行者には必要ありません。

2007年から2009年にかけて、米国内での狂犬病ワクチンの供給が制限され、海外旅行者が特例を除いて事前接種を受けられない事情がありました。暴露後予防処置にワクチンが提供されたからです。この時のワクチンの供給制限はすでに解消されていて、現在は旅行者が事前にワクチン接種を問題なく受けることができます。

咬傷の処置

動物による咬傷はどんな動物であろうとも、石鹸と水をふんだんに使って洗浄し、ポピヨンヨードで消毒します。この局所処置で狂犬病に罹患するリスクがかなり低下します。 縫合を必要とする咬傷では、受傷後数日間経ってから縫合します。出血を抑えるためや、機能の回復、審美的理由で縫合が必要な場合は、傷を縫合する前に狂犬病免疫グロブリン(RIG)を傷創面に適宜浸潤させます。創傷の処置には局所麻酔を使用しても支障ありません。

暴露後予防法

事前にワクチン接種を受けた旅行者

ワクチンの事前接種を受けている人が狂犬病に感染した可能性がある場合は、接種可能なワクチンを2回、受傷日とその3日目に追加接種します。追加接種用のワクチンは近代的細胞培養法で製造されたワクチンを用いますが、事前に接種したワクチンと同じブランドのものでなくとも支障ありません。

事前にワクチン接種を受けていない旅行者

ワクチンの事前接種していない人の暴露後予防法は、狂犬病免疫グロブリン注射20 IU/kgと14日間に亘って4回のワクチン接種(免疫抑制状態の人には1ヶ月に亘って5回接種)します。 傷口を洗浄した後、算出した用量の狂犬病免疫グロブリンRIG(表3-16)をできるだけ多く創傷面の周囲に浸潤させます。咬傷の周囲に注入する免疫グロブリン量は、創傷が小さい場合や指の咬傷では0.5mL程度とします。咬傷が広範囲な場合は、算出した免疫グロブリンの用量を超えないようにします。算出用量が咬傷全てに注入するのに不十分な場合は、咬傷の数に応じて免疫グロブリンを生理食塩水で稀釈し、全ての咬傷に注入できるように増量します。この点は咬傷の大きさと数に対して体重が少なくなりがちな子供でよく問題となります。

免疫グロブリンが咬傷に注入後にまだ残っている場合は、残量を筋肉内注射します。ここでは狂犬病免疫グロブリンの残量が皮下注射ではなく筋肉内注射で注入することに留意します。その理由は筋肉内注射の方が効果的だからです。残量の筋肉内注射は、初回のワクチン注射を受けたのとは反対側の三角筋にするのがよいでしょう。大腿前面の筋肉内に注射することもできます。

免疫グロブリンの投与は暴露後ワクチン接種を開始してから7日以内とします。この7日間という期間は、受傷日から7日間という意味ではありません。咬傷の可能性がある場合には、暴露後予防法は免疫グロブリン投与を含めて受傷後に必ず開始しなければなりません。たとえ、受傷の時期と受診の時期にかなり隔たりがあるとしても開始すべきです。

ヒト狂犬病免疫グロブリンは人工的に免疫を高めたボランティアの血液からプラズマフェレーシスで製造されます。製造されたヒト狂犬病免疫グロブリンの量は世界での需要より少なく、ほとんどの開発途上国では入手できません。ヒト狂犬病免疫グロブリンが入手できない開発途上国では、ウマ免疫グロブリンやその精製された分画を上手く利用している国もあります。このような異種製剤は狂犬病免疫グロブリンが全く利用できないよりはそれなりに効果があります。

ウマ由来の狂犬病免疫グロブリンを使用した場合に起こる有害反応の発生率は0.8~6.0%と低く、有害反応自体も実際には軽度なものです。しかし、ウマ由来の製剤は米国の基準では認可されておらず、あるいは食品医薬局(FDA)が規制しているので、その使用を明確には推奨することができません。さらには、ヒト免疫グロブリンもウマ免疫グロブリンも入手不可能な国では、未精製のウマ由来抗狂犬病血清が使用されていることもあるようです。 抗狂犬病血清を使用する国では、アナフィラキシーを含めて有害反応が高率で発生しています。

海外では、異なった暴露後予防法、異なった投与法、ヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン(HDCV) や精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCEC)以外の狂犬病ワクチンも使用されています。米国では販売が許可されていませんが、精製Vero細胞ワクチンや海外で製造された精製ニワトリ胚細胞ワクチンが訪問する国で入手できる場合は、代替予防法として使用することができます。暴露後の合併症に関する処置法は旅行医学の専門家、保健局、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)から入手できます。

狂犬病ワクチンは、かつては動物の脳で成長させたウイルスから製造されており、未だにその一部が使用されている開発途上国もあります。動物の脳由来のワクチンについては、旅行者が5mL/日 の大用量で14~21日間の投与を提供されたら、それが動物の脳由来ワクチンであることに間違いありません。そのような場合は、旅行者はそのワクチンの接種を受けるよりは適切なワクチンと免疫グロブリンが入手できる国へ移動する方が懸命です。

狂犬病ワクチン

ワクチンの安全性と有害反応

旅行者にはワクチン接種後に、接種部位に疼痛、紅斑、腫脹、掻痒などの局所反応があることや頭痛、吐き気、腹痛、筋肉痛、眩暈などの軽度の全身反応があることを告げておきます。ヒト二倍体細胞狂犬病ワクチンを追加接種した人の6%に蕁麻疹、掻痒症、倦怠感を特徴とする免疫合併症の反応が現れます。このような反応の可能性は精製ニワトリ胚細胞ワクチンではあまりありません。一旦、暴露後に予防処置を開始したなら、ワクチンの局所反応や軽度な全身反応のために途中で間を置いたり、中止してはなりません。

予防措置と禁忌症

妊娠は暴露後予防法の禁忌症ではありません。幼児、児童の事前あるいは暴露後予防法では、ヒト二倍体細胞狂犬病ワクチンおよび精製ニワトリ胚細胞ワクチンの使用は成人の推奨用法に准じます。事前予防法および暴露後予防法の狂犬病免疫グロブリンの用量は体重で算出します(表3-16)。

表3-14 狂犬病ワクチンの事前接種

リスク度 リスクの性質 罹患する集団の典型 事前予防法
持続的 ウイルスは持続して存在し、しばしば高濃度である

気付かないうちに接触している特異的暴露

咬傷、咬傷以外の接触(眼などの粘膜を舐めるなど)、噴霧(気道)感染

狂犬病の研究に従事する研究員1、狂犬病製剤の製造に従事する作業員 一次予防法:6ヵ月ごとに血清学的検査を実施;抗体力価が許容基準より低ければワクチンの追加接種2
頻繁 動物との接触は通常は突発的で原因動物を確認できるが、気付かないうちに接触し、確認できない場合もある

咬傷、咬傷以外の接触、噴霧(気道)感染の可能性

狂犬病が風土病である地域で狂犬病の診断に従事する検査員1、洞窟探検家、獣医および獣医科医院の勤務者、野外作業者 一次予防法:2年ごとに血清学的検査を実施;交代力価が許容基準より低ければワクチンの追加接種2
時々(一般集団よりは機会が多い) 動物との接触はほぼ常に突発的で、原因動物を確認できる

咬傷、または咬傷以外の接触

①狂犬病の発生率が低い地域の獣医、動物管理者、野外労働者

②獣医学生

③狂犬病は風土病であるがただちに生物製剤を含めた医療処置を受けるのに制限がある地域を訪問する旅行者

一次予防法:血清学的検査や追加接種は必要なし
稀(一般集団レベル) 動物との接触は常に突発的で、原因動物を確認できる 狂犬病が風土病である地域の住民を含めて米国民の大半 ワクチンの事前接種は必要なし

1狂犬病の研究や診断に従事する者の相対的リスク判定と長期観察については研究室・検査室の責任者の責任とする(詳細はwww.cdc.gov/biosafety/publications/bmbl5を参照)。
2事前の追加予防接種はヒト二倍体細胞狂犬病ワクチンまたは精製ニワトリ胚細胞狂犬病ワクチンを用量1.0mLで1回、三角筋に筋肉内注射する。抗体の最小許容値はウイルスを血清で1:5の割合で稀釈し、迅速蛍光フォーカス抑制試験rapid fluorescent focus inhibition testにて完全に中和した値とする。抗体力価が最小許容値より低い場合は追加接種する。

表3-15狂犬病ワクチンの事前接種法1

ワクチン  用量(mL) 接種回数  スケジュール(接種日) 接種経路
HDCV 1.0  3 0、 7および 21または28 筋肉内注射
PCEC 1.0    3 0、 7 および 21または28 筋肉内注射

略語: HDCV, human diploid cell vaccineヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン、 PCEC, purified chick embrycell精製ニワトリ胚細胞狂犬病ワクチン
1疾病や薬物療法により免疫抑制の状態である患者は事前接種を延期し、その上事前予防法が適応となる活動を避けるべきである。 この延期法・回避法が不可能な場合、免疫抑制状態の人が狂犬病に罹患するリスクがある時は、抗体力価を予防接種後に確認する。

表 3-16狂犬病の暴露後ワクチン接種法 1

免疫状況 ワクチン/製剤 用量 接種回数 スケジュール(接種日) 接種経路
ワクチン接種歴のない者 RIG plus 20 IU/kg 体重に付き  1 0 可能なら咬傷部位に浸潤させる;残量を筋肉内注射
HDCV または PCEC 1.0 mL 42 0、 3、 7、 14 筋肉内注射
ワクチン接種歴のある者3,4 HDCV または PCEC 1.0 mL  2 0、3 筋肉内注射

略語: RIG, rabies immune globulin狂犬病免疫グロブリン、 HDCVヒト二倍体細胞狂犬病ワクチン、PCEC精製ニワトリ胚細胞狂犬病ワクチン
1全ての症例で、咬傷を石鹸と水で完全に洗浄してからただちに暴露後予防処置を実施する。
2.免疫抑制状態の患者では5回接種する。
3HDCV/PCECの暴露後予防処置前に同剤の事前接種をしている者、またはその他の狂犬病ワクチンを接種していてその際の狂犬病ウイルス中和抗体反応が陽性であったと確認される者
4狂犬病免疫グロブリンは投与すべきでない。

 


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